この記事では、年金給付の中で、病気やケガが原因で障害状態になった時に支給される 障害年金 と被保険者が死亡した時に残された遺族に支給される 遺族年金 について解説します。
年金給付と聞いて、「年をとったら給付されるお金」とイメージしている人は要注意です。
というのも、年をとる以外にも支給される年金があります。それが障害年金と遺族年金です。
老齢年金給付については以下の記事でまとめていますが、今回の記事では障害年金と遺族年金についてわかりやすく解説していきますので、最後まで読んでみてください!
- 障害年金の概要
- 障害基礎年金と障害厚生年金について
- 遺族年金の概要
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金について
公的年金の給付は3種類
国が運営している年金制度のことを公的年金と呼びますが、公的年金の給付の種類は3種類あります。
1つ目は一定の年齢になると受給できるようになる老齢年金、2つ目が病気やケガなどで障害状態になった時に受給できる障害年金、そして3つ目が被保険者が死亡した時に遺族が受給できる遺族年金です。
多くの人がイメージしやすいのが一定の年齢になると受給できるようになる老齢年金だと思います。老齢年金については以下の記事でまとめていますので良かったら読んでみてください!今回は障害年金と遺族年金について皆さんに知ってもらいます!
- 老齢年金 ⇒ 一定の年齢になると受給できる年金給付
- 障害年金 ⇒ 病気やケガなどで障害状態になると受給できる年金給付
- 遺族年金 ⇒ 被保険者が死亡した時残された遺族が受給できる年金給付
障害年金 とは
障害年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人が一定の障害状態になった時に支給される年金給付のことで、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。支給される年金額は、障害の重さを表す障害等級によって異なります。
障害基礎年金 について
障害基礎年金は、国民年金に加入している人が一定の障害状態になった時に支給される年金のことです。もう少し詳しく書くと、病気やケガの診断を初めて受けた日( 初診日 )に加入しているのが国民年金であり、障害認定日に障害等級1級もしくは2級の認定をされた人が対象で、初診日の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上保険料を給付していることが給付の条件です。
障害認定日とは、障害の原因となった傷病の初診日から1年6ヶ月を経過した日のことで、それ以上治療をしても効果が望めない日という意味の治った日も含みます。
障害基礎年金の年金額は障害等級によって異なり、障害等級2級の場合は78万900円に子どもの有無で加算されていきます。障害等級1級の場合は、2級の額の1.25倍の額に子どもの有無で加算されます。子どもの加算は2人までは1人につき22万4,700円加算され、3人以降は1人につき7万4,900円加算されます。
障害厚生年金 について
障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入しており、その前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上保険料を納付していることが要件で、障害認定日に障害等級が1級・2級・3級のいずれかの認定を受けていれば年金給付を受け取ることができます。
障害厚生年金の年金額は障害等級が3級の場合は報酬比例部分のみの支給で、2級の場合は報酬比例部分に配偶者の加給年金額が加算されます。障害等級が1級の場合は、報酬比例部分の1.25倍の額に配偶者の加給年金額を加算した額が支給されます。
障害厚生年金の場合、障害等級が3級より軽い状態であっても、障害手当金と呼ばれる一時金を支給してもらうことができます。
- 障害等級3級でも受けられるのが障害厚生年金
- もらえる年金額が違う
遺族年金 とは
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人が死亡してしまった場合に、残された遺族に対して支給される年金のことです。
国民年金に加入している人の遺族に支給される年金には、遺族基礎年金と寡婦年金、死亡一時金などがあり、厚生年金に加入している人の遺族には、遺族厚生年金、中高齢寡婦年金、経過的寡婦年金があります。
また、遺族基礎年金と遺族厚生年金では、受給資格期間は25年と、他の2つの年金に比べて長いので覚えておきましょう!
遺族基礎年金について
遺族基礎年金は国民年金の加入者が死亡してしまった時、残された遺族に支給される年金のことですが、死亡した被保険者が死亡するまでに、老齢基礎年金の受給資格が25年以上あるというのが受給要件です。老齢基礎年金や障害基礎年金は10年以上なので、間違えやすいポイントですので注意しましょう!
残された遺族にも条件があって、子どもがいる配偶者、もしくは子どもが受給対象者となります。ここでの子どもの定義は18歳の3月末日までの人か障害等級1級・2級であれば20歳未満です。注意点としては、受給権のある配偶者がいる場合は、配偶者に年金は全額支給され、子どもには支給されないという点です。
支給される年金額は、子どもがいる配偶者が受給する場合、78万900円に子どもの加算額を加えた額が年金額で、子どもの加算額は子ども1人につき22万4,700円が2人まで、3人目からは7万4,900円が1人当たり加算されます。子が受け取るときは78万900円(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額となります。)780,900円+2人目以降の子の加算額
寡婦年金と死亡一時金
国民年金に加入している人は、遺族基礎年金以外に、寡婦年金と死亡一時金の給付を受けることができます。寡婦年金と死亡一時金はどちらか一方を選択して受け取る受給です。
寡婦年金とは国民年金の保険料給付済み期間が10年以上ある夫が、老齢基礎年金や障害年金を受給せずに死亡した場合、夫との婚姻期間が10年以上ある妻に60歳から65歳に達するまで支給される年金です。支給される年金額は夫の老齢基礎年金の4分の3です。
死亡一時金とは、国民年金の保険料納付済期間が3年以上あり、次の2つの条件を満たしている人が死亡した時に受けられる給付です。
- 死亡した人が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給したことがないこと
- その人の死亡によって遺族が遺族基礎年金を受給できないこと
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している人が死亡した場合、残された遺族に支払われる年金のことで遺族基礎年金に上乗せで支給される年金です。
遺族厚生年金の受給要件は、死亡した人が加入していたのが厚生年金であり、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あることが要件です。
被保険者が死亡当時扶養されていて、受給をこれから受けようとする対象の人は以下の中で優先順位が高い人だけ、受給することができます。
- 配偶者、子
- 父母
- 孫
- 祖父母
の順で優先順位が決められています。また、配偶者が夫である場合は、55歳以上という条件付きで受給できます。子どもと孫が受給を受ける場合は、18歳の3月末日もしくは、障害等級1級・2級で20歳未満の人というのが条件です。父母、祖父母はいずれも55歳以上であることが遺族厚生年金を受給する条件となっています。
遺族厚生年金の年金額は、被保険者の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3相当額です。ちなみに被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算します。
- 夫・父母・祖父母の受給対象は55歳以上ですが、実際に支給されるのは60歳からという点
- 夫が死亡した場合、子どものいない30歳未満の妻の遺族厚生年金の受給期間は5年に限られる点
- 兄弟姉妹は優先順位にすら含まれないので、受給資格がない点
中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算について
遺族厚生年金に加算されるものとして、中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)と、経過的寡婦加算(けいかてきかふかさん)があります。
中高齢寡婦加算とは、夫の死亡時に子どもがいない妻には、遺族基礎年金が支給されないため、その救済方法として、遺族厚生年金の受給権がある妻には、中高齢寡婦加算が上乗せされます。妻が40歳から65歳になるまで年額58万5,100円が遺族厚生年金に加算されます。
経過的寡婦加算とは、中高齢寡婦加算を受給していた妻が、65歳になることで 老齢基礎年金 を受給できるようになり、中高齢寡婦加算 を受給できなくなります。そこで年金水準を維持するために、1956年4月1日以前に生まれた妻には65歳以後は中高齢寡婦加算の代わりに経過的寡婦加算が支給されます。
まとめ
今回は公的年金の給付の中で、障害年金と遺族年金について解説していきました。
年金は「年をとったらもらえるお金」とだけ思っている人もいると思いますが、実は障害年金や遺族年金というものもあるので、知っておくことが大事です。知らなければ請求もできず、せっかく受給できるのに逃してしまうこともあるかもしれません。
他にも大事なお金の知識があるので、他の記事も読んでみてください!
- 障害年金 ⇒ 病気やケガで障害状態になった時にもらえる年金給付
- 障害基礎年金 ⇒ 病気やケガになった時、加入しているのが国民年金
- 障害厚生年金 ⇒ 病気や怪我になった時、加入しているのが厚生年金
- 遺族年金 ⇒ 被保険者が死亡し、残された遺族に支給される年金給付
- 遺族基礎年金 ⇒ 死亡した被保険者が国民年金の加入者
- 遺族厚生年金 ⇒ 死亡した被保険者が厚生年金の加入者